人を育てる時、ティーチングとコーチングはどちらも必要ですが、ティーチングとコーチングは全く違うアプローチ方法です。つまり、この2つの手法はいずれも、人を育てる時に必要だけど、使い方を間違うと効果が出ない、逆に、うまく使いこなせば人を大きく育てることができる、ということなのです。
この記事では、ティーチングとコーチングの違い、使い分け方、効果的な使い方事例について詳しく解説します。あなたもこの2つの手法の違いを理解した上で、上手に使いこなしてみてください。
ティーチングとコーチングの違い
学校の先生はティーチャー、つまり「教える人」であり、「ティーチング」とは「教えること」です。教育の場面でティーチングは広く使われています。
その人の成長に必要な「知識」や「情報」を、その人が理解できるように教えるのがティーチャーの仕事です。ティーチングの目的は情報伝達であり、知識の獲得です。
一方コーチングは「学びと成長を支援するスキル」であり、継続的な関わりを通して相手の「目標達成を支援」します。支援の目的は、本人が、自分のやりたいことや目の前の課題を、ひとりでできるようになる・解決できるようになることです。
つまりコーチングの目的は「目標達成」であり、そのために必要な知識や情報を、自ら取捨選択し、自分の頭で考えて行動するプロセスを支援することなのです。
ティーチングとコーチングの違いを整理すると下記のようになります。
ティーチング | コーチング |
---|---|
知識や情報を教えること | 学びと成長のプロセスを支援すること |
<ティーチャーの役割> 問題解決に必要な 知識と情報を教えること | <コーチの役割> 目標達成に必要な能力を 自ら備えることを支援する |
<ティーチングの目的> 知識と情報の伝達 | <コーチングの目的> 目標達成と課題解決 |
教えることで 問題解決能力を高める | 問いを使って 問題解決能力を高める |
過去の経験や知識を使って 今の課題を解決するアプローチ | 望む未来イメージに向かって 実現に必要な手段を 見つけていくアプローチ |
フォーキャスティング Fore Casting | バックキャスティング Back Casting |
誰も答えを知らない VUCAの時代には不向き | 先行き不透明な VUCAの時代に最適 |
生徒は先生を超えることが難しい | クライアントは コーチを超えて成長する |
「知っている」「わかっている」けれども「できない」「やれない」のは、知識や情報やスキルを持っていても、それだけでは、目標に向かって動き出すことはできないことを物語っています。
あなたもご存じのとおり、学校の成績が良いことと、社会において成功することは別ものです。つまり、いくら学校の成績が良くていろんなことを幅広く知っていても、それを仕事やプライベートや自分の目標達成のために使えなければ、意味がないということなのです。
ここで補足として付け加えたいのは、学校の先生や教育者の中には、知識や情報・やり方を教えることで、そこから先の「本人の学びと成長を支援している」人もいる、ということです。
自分のあり方や生き様をモデルとして指し示すことで、子ども達や後輩に多大な影響を与える素晴らしい先生や親がいる一方で、自分の考え方を一方的にティーチングして押しつけるだけの先生や親もいて、そういう人達が子ども達の可能性と夢を潰している、ということも、忘れてはなりません。
ティーチングとコーチングの使い分け方と事例
ティーチングとコーチングは、対象者の知識レベル、心理的状態によって、使い分けたほうがうまくいきます。
使い分けのおおまかな指標は下記です。
知識や情報が少ない場合(図の1と2)はティーチング中心で、補足的にコーチングを使います。
例:1は新入社員、2はやったことがない部署に異動したベテラン社員など
知識や情報は多いが経験が少ない場合(図の3)、いわゆる頭でっかちで行動が起こっていない場合は、
コーチングを使って、知識と行動の溝を埋める支援をします。
例:心理的バリア(恐れや不安)が大きく、なかなか行動しない人
知識や情報も豊富、経験も豊富な場合(図の4)は、コーチングだけでティーチングはしません。コーチングで主に行うのは、考え・気持ちの整理と、第三者からのフィードバックです。
例:経営トップや自ら動ける人材の場合
ティーチングとコーチングは併用すると効果的
ティーチングとコーチングは併用すると効果が倍増します。
併用するときのやり方は下記です。
- コーチングで、相手の話を十分に聴き、相手の知識レベルと心理的状況をつかみます。
- 相手の状態に合わせた情報をピンポイントでティーチングします
- ティーチングしたことが、きちんと伝わったのか、相手が本当に欲しかった情報だったのかをコーチングで確かめます。
このように、コーチングでティーチングを挟むやり方を、ヘルスコーチ・ジャパンでは「サンドイッチのスキル」と呼んでいます。
相手の知識レベル・心理的状況をしっかりと把握しないまま一方的にティーチングすると、下記のような返事が返ってきます
- いや、でも、だって・・・
- それはやりました。
- 言われなくてもわかっています。
- 頭ではわかっているんですが・・・
- はい・・・(一応返事はするが納得はしていない感じ)
そしてもしあなたの部下やお子さんが
- 何度言っても行動が起こらない
- 反抗的な態度を取る
といったことが続いているのであれば、ティーチングではなくコーチングが有効です。
ティーチングのメリットとデメリット
ティーチングのメリットは・・・
答えに到達するまでの時間が短いということです。
それはつまり、自分の頭で考えることを辞めてしまうというデメリットにつながります。問題集を解くのに、先に答えを見るのと似ています。
ティーチングのデメリットは・・・
誰も正解を知らない先行き不透明なVUCAの時代には、役に立たないということです。人生をどうデザインしていくか、といった答えがないことの答えを見つけるときにも役にたちません。
実際に、アドバイスやティーチングは、脳活動を停止させること、コーチングは脳を活性化させることが医学的に証明されています。
まとめ
- ティーチングとコーチングはそれぞれにメリット・デメリットがある
- 対象者の知識レベル・心理状態に合わせて、上手に使い分けると成果が上がりやすくなる
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