この記事では、コーチングとマネジメントの違い、職場での活用方法、使い方について詳しく解説します。ポイントは「コーチング=マネジメントではない」だけど「マネジメントにコーチングを使うとうまくいく」と言うことです。
まず最初に「コーチング」と「マネジメント」の「違い」と「関係性」を解説します。次に、なぜ今の時代に、コーチングが求められているのか、実際にコーチング型マネジメントを行うと、なぜチームが活き活きするのか、その理由をできるだけわかりやすくお伝えしていきます。
まずは定義をはっきりさせよう
コーチングとマネジメントの違いについて語る前に、そもそも「コーチングとは何か?」「マネジメントとは何か?」をはっきりさせておきましょう。
コーチングとは何か?
コーチングとは簡単に言うと「相手の学びと成長を支援するスキル」であり「目標達成を支援するコミュニケーションスキル」です。
別記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧下さい
マネジメントとは何か?
マネジメントとは簡単に言うと「組織に成果を上げさせるための仕組みやツールのこと」を言います。
こちらも別記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧下さい
マネジメントとは何かを簡単に解説(種類・必要な能力・業務一覧あり) | コーチングチャンネル
コーチングとマネジメントの違い
マネジメントを円滑に行うには、いくつかのスキルが求められます。
米国の経営学者ロバート・L・カッツが提唱した理論によると、1-テクニカルスキル(業務遂行能力)2-ヒューマンスキル(対人関係能力)3-コンセプチュアルスキル(概念化能力)の3つです。
この理論は「カッツモデル」と言われる人材育成モデルです。カッツモデルについては下記ブログで詳しく解説しているので合わせてご覧下さい。
コーチングは、これら3つのスキルのうち、2の「ヒューマンスキル」に含まれるスキルのひとつです。
図にするとこんな感じです。
コーチングを使ってマネジメントを進めるやり方のことを「コーチング型マネジメント」と言います。
コーチング型マネジメントとは何か?
コーチングの考え方やスタンス・コーチングスキルを使ったマネジメントの方法を「コーチング型マネジメント」と言います。コーチング型マネジメントは、いろいろある「マネジメントスタイル」の中のひとつです。
コーチング型マネジメントを理解するために、他にどんなマネジメントスタイルがあって、それらの中でコーチング型マネジメントは、どういった位置づけなのかについて解説します。
マネジメントスタイルの種類(主だったもの)
一般的なマネジメントスタイル
一般的に、マネジメントスタイルは次の3種類に分類されます。
専制型マネジメント
いわゆる指示命令型、独裁型・トップダウンで行うマネジメントスタイルです。
放任型マネジメント
チームメンバーにほぼ完全な自主性を与えるマネジメントスタイルです。
民主型マネジメント
合意に基づいて意志決定をしていくマネジメントスタイルです。マネージャーは議長的な役割をします。
これら3つのスタイルの他に、協議型・説得型・容認型・歩き回り型、などがあります
チームや相手の習熟度によって変えるマネジメントスタイル
チームの成長レベルによって、あるいは、相手の習熟度によって変えることを推奨するマネジメントスタイルもあります。
主だったものとしては、チームの成長レベルを4段階に分け、その成長レベルに合わせてマネジメントスタイルを変えることを推奨している「タックマンモデル」、部下の成熟度合いに合わせてマネジメントスタイルを変える「SL理論(状況対応型リーダーシップ)」などがあります。
▶タックマンモデル
タックマンモデルとは、1965年に心理学者のブルース・W・タックマンが提唱した、チームビルディングにおける成長段階を表したモデルのことです。
その後、上図のように、一方向に向かって続く形ではなく、2-混乱期・3-統一期・4-機能期をぐるぐる巡回するモデルに修正されました。
Stage | 状態 | マネジメントスタイル |
1-Forming形成期 | メンバーが集まっただけでチームになっていない | 指示型:方向性を共有する強いリーダーシップが必要 |
2-Storming:混乱期 | 自分たちの役割・作業分担を理解する時期。不安や不満が出やすい。 | 説得型:メンバーと向き合い対話を促すリーダーシップが必要 |
3-Norming:統一期or規範期 | 互いを理解し始め、チームであることが楽しくなる時期 | 参加型:目標達成に向かってメンバーを支援し、責任を分かち合うリーダーシップが効果的 |
4-Performing:機能期 | ひとり一人がリーダーシップを発揮して自律的に動くようになる時期 | 委任型:意志決定と問題解決の責任を部下に任せるリーダーシップが効果的 |
5-Adjourning:散会期 | 目標を達成してチームが解散する時期 |
▶SL理論(状況対応型リーダーシップ)
SL理論(状況対応型リーダーシップ)とは、1977年に行動科学者のポール・ハーシー(Paul Hersey)と組織心理学者のケネス・ブランチャード(Kenneth H Blanchard )によって提唱された「部下の習熟度や状況に合わせてリーダーシップのスタイルを変える必要がある」という理論です。
Situational Leadershipの頭文字をとってSL理論と言います。
「説得型」を「コーチ型」と表記しているサイトが多々見られますが、大元の「1分間マネージャー-ダイアモンド社P133」では「説得型:Selling」となっています。自らのアイデアや腹案を売り込むSellingのような接近方法でリードする、という意味です。
実のところ、国際コーチング連盟の基準に則った「コーチング」は、売り込んだり提案したりは決してしないので、「コーチ型」という表記は間違いです。
それぞれの意味は、タックマンモデルでの解説と同じです。
コーチング型マネジメントはどこに位置するのか?
では、コーチング型マネジメントはどこに位置するのでしょうか?
コーチングのスタンスは、双方向・カスタマイズ・継続的コミュニケーションを行うことなので、チームの成長レベルに合わせて関わり方を変えるタックマンモデルや、部下の成熟度に合わせて変化させる状況対応型リーダーシップのほうが、親和性があります。
タックマンモデルにおいては、ステージ3の統一期(参加型)・ステージ4の機能期(委任型)で使うことが多いでしょう。
SL理論(状況対応型リーダーシップ)においては、図の左側の委任型・参加型に該当する部下に対して使うことが多いと思われます。
ただしコーチングは、マネジメントの場面においては、ティーチングや指示命令・リクエストなど、他の関わり方と併用して行われます。
チームの成長レベル、部下の成熟度に合わせて、使う分量を変えるイメージです。
さらには、指示型・説得型のアプローチをした後のフォローアップで使っても効果的です。
チームでの話し合いをしてチームの方針が決まった後の、個別のフォローアップでも有効です。チームでの決定事項に満足いかなかった個人に対して、個人としてチーム目標にどう取り組んでいくかということをコーチングするといったやり方となります。このようなやり方は、クロスコーチングⓇと言います。
つまり、コーチングは様々な場面で使える、汎用性の高い関わり方だと言えます。
まとめ
「コーチング=マネジメント」ではありません。しかし、「マネジメントにコーチングを使う」とチームマネジメントがとてもうまくいきます。
なぜなら、コーチングは数あるマネジメントスキルのひとつであり、他のマネジメントスキルにプラスして使うととても効果的だからです。
指示命令を主軸とした「従来型マネジメント」が通用しなくなった今、あなたのマネジメントスタイルにコーチングを取り入れることは、有効だと言えるでしょう。
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